実際のニック・ホーンビィ

この映画の主人公ポールは学校の教師。
ニック・ホーンビィもまた物書きになる前は教師でした。
かなり彼自身を投影したストーリーになっているのかもしれません。
彼女が妊娠して一度は覚悟するものの紆余曲折、
けっきょくアーセナルの優勝が再び二人の心を近付けてくれる。
そんなありがちなストーリーですが、
私はニック・ホーンビィのことを思いました。
彼の子供は自閉症児、そして離婚。
「ああ、産まれる子供が自閉症だなんてどんな親も思わないなぁ」って。
心が温かくなるハッピー・エンドにそんなことを思う私も私ですが、
実はこの二人、上手くいかなくなるような気がして仕方がありません。
ニック・ホーンビィの作品全てに共通していますが、
一応のハッピー・エンドではあっても大団円ではない。
その先に続く人生に思いを馳せるとふと不安がよぎることもある。
それはきっと彼自身の人生なのかもしれません。
でも、だからこそ彼の作品は真実味があるのかも。
大人になりきれない男の行き着く先がどこにあるのか、
あるいはどこにも行き着けないのか。
シニカルにユーモラスに描いてくれるニック・ホーンビィ
大好きな作家です。

ぼくのプレミア・ライフ (新潮文庫)

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